研究概要 |
光増幅器のガラスホスト材料候補として、Dy^<3+>イオンを含有し、Ga_2S_3,InF_3,ZnF_4,TeO_2系を主成分組成とするガラス試料を溶融法で作製した。試料はダイアモンドカッターで切削、光学研磨した後、吸光分光光度計により、波長300-3200nmの範囲で吸光スペクトルを測定し、4f電子遷移に基づく吸収バンドの積分強度、ガラスの希土類濃度、屈折率から、5本の光学吸収遷移線の吸収断面積を求め、3つの配位子場Ω_tから波長1.3μmの発光の始準位からの発光遷移確率を算出した。また、QスイッチパルスNd: YAGレーザ励起により、分光器とInGaAs近赤外高速フォトダイオード、100MHzオッシロスコープ(LeCroy社製)により検出した1.3μm蛍光減衰曲線から蛍光寿命を求め、^6F_<11/2>準位の量子効率、非輻射緩和速度を算出した。 波長1.3μmの光学遷移である^6F_<11/2>-^6H_<15/2>遷移の吸収断面積はガラス組成によって大きく変わり、フッ化物系ガラスに比べ、テルライト系、硫化物系では非常に大きな値を示した。これは大きな共有結合性と配位子場の非対称性によるΩ_2の増大と対応している。発光は最もフォノンエネルギーの低いGa_2S_3系ガラスで観測され、このガラス中で1.3μm発光の自然放出係数は2.6×10^3S^<-1>で、発光始準位からのブランチ比は、93%、量子効率は8%であった。Dy^<3+>イオンはPr^<3+>イオン比に比べ準位の性質から、励起波長の選択幅も広く、光増幅器用ガラスとして、多フォノン損失の抑制と遷移確率、量子効率の向上を目指した新規ホストの開発が期待できることを明らかにした。
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