研究概要 |
原料のひとつである硫黄(S)の高純度化のために、石英ガラスアンプルを用い申請の主要設備高真空排気装置で蒸留し、水、水素化物、炭化物及び酸化物の除去に成功した。Ge-Ga-S系ガラスのガラス化範囲を決定し、結晶化温度T_xとガラス転移温度T_gの組成依存性を調べた。Ge_<25>Ga_5S_<70>ガラス(原子比)でT_x-T_gが100°C以上の安定なガラスが得られることがわかった。高純度Ge-Ga-S系ガラスを調整し、光学特性の組成依存性を調べた。屈折率はS含有量に著しく依存し、Ge量一定のときS含有量の減少(Ga含有量の増大)とともに増大した。この結果はS含有量の変化に伴うガラス構造の変化、例えばS-S結合やSーリングの量)と関連づけるものと推定された。Nd^<3+>をドープしたGe-Ga-S系ガラスについて、Judd-Ofelt理論を用い自然放出確率(A係数)を評価し、A係数の組成依存性が概ね屈折率の変化と対応することがわかった。^4F_<3/2>準位からのA係数は13,000〜20,000S^<-1>と極めて高い値を示し、この値は酸化物ガラスやフッ化物ガラスに比べて格段に大きいことがわかった。Pr^<3+>をドープしたGe_<25>Ga_5S_<70>ガラスを調整し、1.3μm帯光通信用増幅器に利用される^1G_4→^3H_5準位の蛍光特性を評価し、その蛍光寿命が約300μsであることがわかった。この値とJudd-Ofelt解析から推定した量子効率は約50%であり、ZBLAN(フッ化物ガラス)の1.4%に比べて著しく高いこと、また現在最も有望とされるGe-La-Sガラスの56%と同等であることがわかった。さらに、この量子効率の結果からも本研究で検討した調整プロセスにより高純度硫化物ガラスが調整可能であることが支持された。
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