研究概要 |
本年度は申請時の計画通りに研究を遂行し,以下の点について明らかにした. 1.不飽和化合物であるテトラフルオロエチレンをモルデナイト型ゼオライトに吸着後,γ線を放射してその時生成するラジカルを電子スピン共鳴(ESR)によって調べた.照射直後,77Kでは,フッ素特有の大きな超微細結合の異方性が現れた水素付加型ラジカル(CF_2H-CF_2・)に帰属されるESRスペクトルが得られた.また,室温まで昇温するとポリテトラフルオロエチレンの生長末端ラジカル(R-CF_2-CF_2・)のESRスペクトルが認められた. 2.γ線照射後,室温まで昇温したテトラフルオロエチレン-モルデナイト試料にポリテトラフルオロエチレンが生成していることが赤外分光,示差熱重量分析測定からわかった. 3.細孔径が小さなナトリウム交換A型ゼオライトではポリテトラフルオロエチレンはほとんど生成しなかった.また,ポリテトラフルオロエチレン/ゼオライトに吸着する水の量は母体ゼオライトと比べて大きく減少することが熱重量分析より明らかとなった.以上のことから,ポリテトラフルオロエチレンはゼオライト細孔内に包装していると推定した. 4.ゼオライト上に生成したポリテトラフルオロエチレンの量はゼオライトのシリカ/アルミナ比に依存することがわかった. 5.コバルトイオン交換ZSM-5およびモルデナイトゼオライトの一酸化窒素の吸着特性を測定したところ,交換されたコバルトイオン1個に対して2個の一酸化窒素が不可逆的に吸着することがわかった.
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