太陽電池として優れた特徴を持つアモルファスシリコン薄膜(以下、a-Si膜)中の水素の拡散挙動は、光劣化というよく知られたa-Si太陽電池の特性変化と密接な関係があると考えられる。そこで本研究ではa-Si中の水素の拡散現象、特に電場内での拡散(電界拡散)に注目して実験を行った。 実験には、ガラス基板上に成膜した2種類のa-Si膜を用いた。一方はノンドープa-Si単層膜、他方はpiu層を形成したa-Si膜である。前者では電界拡散現象を特徴づけるパラメータ有効電荷Zeの測定を試みるため以下のような電界拡散実験を行った。まず、室温0.4Torrの重水素雰囲気中で、RF放電を利用して重水素をa-Si中に注入、電極形成後a-Siに10Vの直流電圧を印加し、100℃および200℃で10日間保持した、その後、2次イオン質量分析計(SIMS)にて重水素の濃度分布を測定した。一方、後者では水素の濃度分布に対するpin接合面に形成した急峻な電位勾配の影響と光照射の影響を調べるため室温と100℃で20日間水銀ランプを光源として光照射を行った。その後SIMSによって軽水素濃度分布を測定した。まず、ノンドープa-Si単層膜のSIMSの結果は100℃においては電圧の印加の有無で重水素濃度分布に明確な違いは見られなかった。200℃においては、a-Siから重水素が漏洩してしまい測定ができなかった。一方、piu層を形成したa-Si中の水素分析の結果は、SIMSの水素のバックグランドが高く、水素濃度分布への光照射の影響は明確ではなかった。現段階では満足できる結果が得られなかったのでさらに、単層膜については、Pまたはn型単層膜での測定をpin層を形成したa-Siでは実験条件の見直しを行い、再度実験を行う予定である。
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