研究概要 |
本研究ではナノ結晶集合体の形成機構およびそれに影響を与える諸因子の解明,さらに集合状態と微少領域における機能特性の相関性を解明することを目的に,機能特性が極めて構造敏感なことが従来の申請者の検討により確認されている,無電解Co系垂直磁気異方性薄膜(二次元ナノ結晶集合体)を中心に検討を行った. まず組成が極めて単純かつ常温での形成が可能な無電解CoNiP浴系を開発した.この系においてはpH値により膜の磁気特性が大きく変化し,最適点では保磁力2500Oeという高い機能特性を示すものが得られることが確認された.またin situ STM解析を行った結果,10nm径程度のナノ結晶が集合し数十nm径程度の粒子群を形成しながら成長していることが明らかとなった.一方無電解析出薄膜においては従来微細構造変化は浴中の金属イオンの錯体形成状態によるとされていたが,in situ UV-Vis解析により浴中の錯状態を検討したところ膜微細構造との相関性は認められず,基板表面でのadatom拡散状態等が膜微細構造形成を支配していることが示された. 次に,微少領域における機能特性の解析について磁気力顕微鏡(MFM)を用いて詳細な解析を行った.この検討には,特異な磁化状態の形成がこれまでの申請者の検討で確認されている,無電解析出複合薄膜(CoNiReP/CoB系およびCoNiReP/CoNiP系)を用いた.まず各薄膜に同一磁界強度で微少磁化領域形成を行い,その状態をMFM観察した結果,複合型薄膜は単層薄膜より強く磁化されると共に,磁化転移領域の磁界勾配も急峻となるのが認められた.ここで両複合型媒体においても微少磁化状態に差異がみられたため,これらについて更に磁化強度を変化させて系統的検討を行ったところ,微少磁化モードは下層部の保磁力(Hc_<(u)>)値の影響を強く受けることが明らかとなった.このような磁化転移状態は申請者のグループを始めとした内外の研究グループにより予想されていたが,今回初めて直接的に確認されると共に,その定量的評価がnmオーダーで可能となった.
|