非接触加工装置は3年前に設計、制作し、機械的動作の確認、ディンプル加工の評価はすでに終了している。本研究では以上の結果を踏まえ、薄膜化の条件を検討し、TEM試料の作製および観察を行った。また、観察の結果より、非接触加工法のTEM試料作製の可能性の評価を行った。以下に得られた結果の概要を示す。 1)研磨液の検討と非接触加工の確認 マグネシア、ムライト、アルミナ試料では黄銅工具、炭化珪素砥粒液の組み合わせで非接触加工が可能であった。また、シリコン試料ではテフロン工具、アルミナ砥粒液の組み合わせでも非接触加工が可能であった。シリコンの加工に於いて、砥粒液として平均粒径0.3μmのアルミナを用い、砥粒液の溶媒にエタノールを用いる事により表面荒さをサブミクロン以下に抑えることができた。 2)メカノケミカルポリシングによる研磨 加工変質層のない超潤滑面を得るため、シリコン試料を用い、コロイダルシリカによるメカノケミカルポリシングを本装置で行った。表面荒さは数十nm以下にすることができたが、加工表面に非晶質相ができてしまった。 3)TEMによる加工損傷の評価 以上で検討した研磨条件を基に、実際にTEM試料を作製し、加工変質の評価を行った。評価に供した試料はシリコンウエハ、アルミナである。シリコンについては高分解能観察可能な厚さ(数十nm以下)まで薄くすることができた。しかしながら加工によって発生したと思われる転位も確認された。アルミナについては通常の低倍率の観察(10万倍以下)は可能であった。しかしながら、加工によると思われる損傷が見られた。 以上の結果より、本装置を用いることにより、電顕観察が可能な厚さに加工できることが分かった。今後、更にメカノケミカルポリシングの加工条件を検討すれば、加工変質層のない、良好なTEM試料を作製することが可能であると思われる。
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