研究概要 |
高分子鎖を高度に配向させることは非常に有用であるため、高配向化の試みは超延伸法など、いくつかなされている。その中でも、自発的に配向する性質を持つ上、芳香環を骨格に有するので、高強度、高融点などの機能を比較的容易に発現させることが可能なため、最近液晶性高分子が注目されている。さらに、これらの液晶高分子は磁場により配向することが知られている。そこで、本研究では代表的なサーモトロピック液晶であるPHB/PETコポリマーの磁場配向試料と機械的な一軸配向試料の力学物性と構造について考察を行った。 試料はPET40mol%,PHB60mol%のランダム共重合体(RODRUN LC-3000ユニチカ製)を用いた。この試料を6Tの磁場中で265℃で熱処理することにより磁場配向資料を作成した。機械的配向試料は280℃の鉄板上で試料を十分溶かし、鉄板から取り出し若干冷えたときに引き伸ばすことで作成した。配向度の評価は広角X線回折の強度分布から求めた。同じ配向度の場合、フィルム状の磁場配向試料と機械的配向試料とでは機械的配向試料が力学物性に優れている事が分かった。この違いはそれぞれの構造の違いによるものであると考えられる。そこでFT-IRによりコンフォメーション等の変化について調べたところ熱処理による影響のみ見られ磁場と機械的配向による違いが見られなかった。つまりミクロなレベルでの構造に違いが見られなかった。力学物性に見られる違いは、より大きな単位の構造の違いによるものであると考えられる。つまり機械的配向の場合には液晶ドメインがせん断等によりモノドメイン構造に近く、磁場配向では液晶ドメインが磁場によるトルクを受け磁場方向に並ぶと考えられるので、元のポリドメイン構造のままであると考えられる。この構造の差が力学物性の差に現れたものと考えられる。
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