研究概要 |
アルミニウムの耐摩耗性や耐焼付き性を改善するため,合金化や種々の表面改質法が開発されてきた.鋼においてはイオン窒化は有効な表面効果であり,実用化されているが,アルミニウムにおいては,表面に存在する自然酸化膜や,雰囲気中に含まれる酸化性ガスが,アルミニウムのイオン窒化を阻害するため,イオン窒化に成功した例は少ない.そこで本研究では,イオン窒化炉内でブラスと処理を行うことにより自然酸化膜を除去した後,グロー放電を発生させ,アルミニウムを窒化した. 窒化処理後のX線回折図形より窒化アルミニウムが同定された.窒化に対するプラズマ電圧,ブラストガス圧等の各因子の効果を解析するとブラストガス圧,処理時間,処理温度が有意であり,特にブラストガス圧が高度に有意である.アルミニウム表面の自然酸化膜除去には,スパッタリングや種々の研磨法が考えられるが,ブラスト処理はこれらと比較して時間が短く,窒化処理装置中で行うことが可能なため,酸化膜除去後の再酸化の心配が少ないなどの点で優れている.またブラスト処理を行うと,アルミニウム表面において,短回路拡散の一種であるパイプ拡散を引き起こす転位の密度が増大し,窒素の拡散を促進すると考えられる.また,処理温度が高いほど窒素はアルミニウム中に拡散しやすくなり,窒化速度は増加しやすくなると考えられる.窒化処理後の結果からも処理温度が上昇すると窒化が促進されている.また当然ではあるが処理時間が増加するほど窒化量が増加している.
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