本研究で開発をおこなった熱伝導度測定方法を以下に示す。ホットサーモカップルにはPt-Pt・10%Rh(S型)を用い、その接点に直径2mm、厚さ0.2mmのPt円盤を溶接する。上下に対向させた円盤間に高さ2mmの試料融液を保持する。試料液柱の周りにニクロム線ヒ-タを設置し、ヒ-タ電力とホットサーモカップル電力を調整して、ヒ-タ温度が試料温度と等しくなるように設定する。側面からの放熱を無くすことで、試料内の対流を抑制する効果と測定中に熱流が一次元化する効果がある。上端の加熱電力をステップ状に上げ、その後の熱起電力をデジタルロガーに記録する。測定された温度から熱伝導度を求めるために、軸方向1次元の伝熱解析を行う。上端の境界条件は時間変化する測定値を内挿して与える。下端は試料内部からの熱伝導が外部への熱伝達に等しい条件を与える。熱伝導度の値を変化させて、解析温度と測定温度の差が最小となる値が求める熱伝導度となる。 次に、熱伝導度が測定されている硝酸ナトリウムを試料として用いて本測定法の妥当性を検証した。下端の境界条件中の伝熱係数として気相の自然対流伝熱係数である35W/(m・K)を用いると計算される温度上昇が測定に比較してかなり大きくなることが分かった。これは、円盤を保持しているホットサーモカップル内の熱伝導による冷却効果であると考えられる。伝熱係数を300W/(m・K)と設定することで下端温度の計算値と実測値がほぼ一致することを確認した。この値は、熱電対の形状や温度に依存するが、試料の物性値には依存しないため、実験であらかじめ温度の関数として伝熱係数を求めておけば、任意の試料の熱伝導度が求められる。また、この伝熱係数の値を採用して、熱伝導度を変化させた計算を行い、下端温度の時間変化が有意に変化することから、本手法で十分に熱伝導度が測定できることを明らかにした。
|