本課題では、アレルギーに関与する肥満細胞のアレルゲン応答機能に対して低電圧印加刺激を及ぼす電気化学制御効果と作用機構を明らかにすることを目的として研究を行い、次のような成果を得ることができた。 1)電気化学刺激用培養セルの作製とRBL細胞の培養 肥満細胞の培養状態および免疫応答を顕微鏡観察でき、しかも通電刺激を行えるように、In_2O_3蒸着ガラスを導電性の培養基板として用い、その上面にシリコン製ウエルを設置して、さらに通電用対極をセットした培養セルを作製した。株化された肥満細胞であるRBL-2H3細胞は、In_2O_3蒸着ガラス基板上でも培養フラスコ底面とほぼ同様の形態、速さで増殖するが、白金対極に対して0.4V以上の電圧を印加すると増殖が抑制され、細胞が球形化することを明らかにした。 2)アレルゲン感作によるヒスタミン放出に及ぼす電圧印加効果の検討 RBL細胞をIn_2O_3蒸着ガラス電極基板上で培養後、IgEおよびアレルゲンを添加し、免疫応答による放出されるヒスタミンの量をHPLC-蛍光検出システムを用いて定量した。電極基板上で培養されたRBL-2H3細胞は、アレルゲン刺激により細胞内に貯留されているヒスタミンのおよそ30%を放出したが、種々の電圧を印加した時のヒスタミン放出%と電圧を印加しなかった時の放出%とを比較検討したところ0.3Vの電圧印加下では、わずかながらヒスタミン放出が抑制されることを明らかにした。 3)RBL細胞のアレルゲン応答機能への電気化学効果の機作検討 蛍光標識した抗IgE抗体を模擬アレルゲンとして用いて細胞上でのIgEレセプターの会合過程を蛍光顕微鏡観察し、電圧印加の効果を検討したところ0.3V程度の印加によりレセプターの会合が抑制されることが示され、電気化学効果がレセプターの会合過程に影響を及ぼしていることを明らかにできた。
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