研究概要 |
本研究は形状記憶合金であるTi-Niを利用した電気化学検出器を開発し,アミノ酸及び糖類をより高感度かつ安定に検出する方法をとしている。ここで,Ti-Ni電極の電気化学的な挙動及びHPLC分析への応用について報告する。 アルカリ性溶液においてTi-Ni電極はNiと類似した電気化学的挙動を示し,0.50及び0.45Vvs.Ag/AgCl付近にNi^<2+>/Ni^<3+>の酸化還元波が明瞭に観測された。ボルタモグラムの経時変化はNiに比べて非常に小さいことから,電極表面に酸化膜の構造は安定であることを示唆した。0.1MNaCl溶液中で金属腐食反応を検討した結果,NiとCr-Ni電極のNiイオン溶出電位はそれぞれ0.3と0.5Vvs.Ag/AgClであったが,Ti-Ni電極では約1.5Vであり、優れた耐食性を示した。 Ti-Ni電極はにアミノ酸と糖類などに対して触媒的な酸化活性を示し,アルカリ性電解液中にグリシン,グルコースなどを添加すると0.5V付近に接触反応により増大した酸化ピークが観測された。この電極を用いたWall-jet型の電気化学検出器を試作してフローインジェクションによりアミノ酸及び糖類の応答を検討した。その結果,グルコース,フルクトース,リボース,ラクトースなどの糖とグリシン,ロイシン,アラニンなどのアミノ酸に対し2x10^<-6>〜1x10^<-3>Mの濃度範囲で良い直線性応答を示し,検出下限はpmolオーダであった。試料を100回以上連続注入して得られたシグナルのRSDは0.5%以下で、検出器は10日間以内に安定であることが認められた。また,Hamilton RCX-10陰イオン交換カラムに接続して,HPLCにより果物などの実際試料の中に糖類の分析も行われた。(研究成果の一部は日本分析化学44年会にて発表,一部は学会誌Electroanalysisに投稿中である)
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