研究概要 |
本研究では細孔径を自由に制御可能で、かつ細孔径分布の極めて小さな新規無機多孔性材料(MCM-41)を「鋳型」として半導体微粒子を調製し,その光特性,光触媒作用について検討した. 1.MCM-41の最適合成条件の検討 コロイダルシリカをシリカ源としてMCM-41を合成する際の最適条件(反応時間,反応温度,pH,テンプレート濃度)について検討した.その結果,最適合成条件はpH:13.1,テンプレート/Si:0.3-1.18,反応時間:48時間以上,反応温度:140℃であると結論した. 次に,MCM-41合成後の水処理条件(pH,温度,時間)についても検討し,pH:6.5-10.9,温度:60-90℃で20時間以上処理すると生成物のXRD強度が増加することを認めている. 2.微粒子担持試料の調製とその光特性 合成したMCM-41の細孔内に各種半導体微粒子を含浸法,ポアフィリング法により高分散させた試料の調製を試みた.調製した試料の紫外・可視吸収スペクトルから,調製したほとんどの試料で量子サイズ効果に基づく吸収スペクトルのブルーシフトが観測された.これは担持された超微粒子の粒径が担体の細孔径により制御されたため,半導体のバンドギャップエネルギーが量子サイズ効果により変化したと考えられる.この結果は,細孔径を厳密に制御した無機多孔体に半導体微粒子を担持することで,半導体のバンドギャップを任意に制御できることを示している. 3.光触媒材料としての評価 次にFe_2O_3を担持した試料を光触媒に用いて水の分解を試みた.気相にCO_2を導入して光照射を行ったところ,定常的な水素発生が確認された.この結果はバルクのFe_2O_3では進行しない水の光分解が,Fe_2O_3超微粒子上では量子サイズ効果により進行することを示している.現在,CO_2の還元等について検討している.
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