研究概要 |
本研究では、酸素欠陥を有するLi_<4/3>Mn_<5/3>O_<4-δ>と八面体サイト一部を他の遷移金属で置換したLiM_yMn_<2-y>O_4(M=Cr,Co,Ni;y=1/9,1/6,1/3)の合成を行ない、そのリチウム二次電池特性の評価を行なった。 まず、Li_<4/3>Mn_<5/3>O_<4-δ>の合成は炭酸リチウムと酢酸マンガンをLi/Mn=4/5になるように混合し、まず350℃で1時間酸素気流中で加熱し、金属塩の分解を行なう。その試料を粉砕後、酸素気流中、400℃で所定の時間加熱し、Mnの酸化を行い、結晶性を高めるためにペレット成型・真空封印後、400℃で一週間加熱した。X線回析の結果、合成を行なった試料は、立方晶のスピネル構造を有しており、その格子定数は酸化時間が増加するにつれ、減少した。これは、Mnが3価から4価へ酸化され、イオン半径が減少するためであると考えられる。また、定電流法により4V領域の充放電試験の結果、酸化時間に対する1回目の放電曲線は酸化時間が長いほど、放電容量は減少することがわかった。これは、4V領域におけるリチウムのインターカレーション・デインカーカレーションの際には、Mn^<3+>【double arrow】Mn^<4+>の酸化還元が生じるため、試料中のMn^<3+>の量と放電容量は比例するものと考えられる。また、サイクル特性については、長時間酸化を行なった試料については、100回程度のサイクルでは容量の低下は見られなかった。一方、LiM_yMn_<2-y>O_4については遷移金属の置換量が増加するに、従い放電容量は減少することがわかった。この放電容量に関してもLi_<4/3>Mn_<5/3>O_<4-δ>と同様に、試料中のMn^<3+>の量と放電容量は比例するものと考えられる。このように、Mnを他の遷移金属で置換したスピネル型酸化物の方がLiMn_2O_4より良好なサイクル特性を示した。充放電容量とサイクル特性の両者を考慮すると、LiCr_<1/6>Mn_<11/6>O_4あるいはLiCo_<1/6>Mn_<11/6>O_4がスピネル型酸化物正極では、現在までのところ優れた特性を示すと考えられる。
|