液相法により常温で有機高分子表面に選択的に緻密なシリカ膜を形成させるための、基板の処理条件、過飽和水溶液の調製条件及び基板の水溶液への浸漬条件を明らかにすることを目的として研究を実施した。テトラエトキシシランを用いたプラズマCVD処理を有機高分子基板の1種であるポリテトラフルオロエチレンに10秒から60秒間行うと、多孔性で緻密性の低いシリカ膜がその表面に生成することがわかった。メタケイ酸ナトリウム・9水和物を蒸留水に溶解し、塩酸を加えてpHを3.0に調整することにより過飽和のケイ酸水溶液を得、これに上記基板を浸漬すると、水溶液中でシリカが成長し、基板表面に緻密で均一なシリカ膜が形成された。したがってテトラエトキシシランを原料に用いたプラズマCVD処理は、過飽和のケイ酸水溶液中で有機高分子基板表面に選択的にシリカ膜を成長させるためのシリカ核の形成に対して有効であることがわかった。 次に、g-アミノプロピルトリエトキシシランを用いたシランカップリング処理を有機高分子基板に施した後に上記のプラズマCVD処理を行い、有機高分子基板の表面構造変化をシランカップリング処理をしない場合と比較した。その結果、上記シランカップリング剤を用いたプラズマCVD処理は、過飽和のケイ酸水溶液中で有機高分子基板表面に選択的にシリカ膜を成長させるためのシリカ核の形成に対して有効ではないことがわかった。これは、過飽和のケイ酸水溶液中に存在するシラノール基が、シランカップリング剤を用いたプラズマCVD処理によって生成したシリカ膜のシラノール基と脱水縮合反応することにより、シロキサン結合を形成したためと考えられる。
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