研究概要 |
ゾル-ゲル法は均質性の高い材料が得られるなど、様々な特長をもつが、多成分からなるセラミックスの合成には、金属アルコキシドによってその加水分解及び縮重合反応速度が大きく異なるために、ゲルの均一性などに問題が生じることが多い。そこで、様々な金属元素とケイ素のアルコキシドとのゾル-ゲル反応をNMRを用いて調べ、金属イオンがゾル-ゲル合成法に及ぼす影響を検討した。さらに高い均質性をもつキセロゲルを得るために、合成条件の最適化を行うとともに、熱処理温度の低温化などを含む物性面からも、合成条件の検討を行った。 1.ケイ素と金属元素との反応過程の測定と結合生成の最適化 金属イオンとしてNa^+、K^+、Li^+などのアルカリ金属イオンについて検討した結果、これらのイオンはケイ素に対して修飾イオンとしてのみ利用すること、また反応溶液のpHを13.1以上にすることによってSi-O-M(M:Na,K,Li)の結合が得られること、さらにSi-O-Liの結合がSi-O-NaやSi-O-Kと比較して、若干強い結合が得られることがわかった。さらに今後、他のカチオンと比較検討することによって、様々な種類のイオンがゲル生成に及ぼす影響の違いを定量的に検討できるだけでなく、多成分系における合成条件の最適化への近道となる情報が得られることが示唆された。 2.キセロゲルからの結晶化過程 多成分からなるセラミックスの例として、Na_2O-Y_2O_3-P_2O_5-SiO_2系ナトリウムイオン導電体を用いた。焼結体の諸物性を含めて低温合成等を目的とした合成条件の最適化について検討した結果、熱処理後に試料内部に残留する有機物やOH残基などもその物性に影響を及ぼし、単に含まれるカチオンが均一に分布しているだけでなく、骨格となるゲルの3次元ネットワークが十分に発達していることも非常に重要であることがわかった。
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