【目的】骨欠損部充てん材および生体関連セラミックスとして注目されている水酸アパタイトは、おもに固相法や液相法で合成されている。しかしながら、固相法では粉体の粒子径や形態の制御はできず、液相法ではある程度の粒子形や形態の制御は可能であるが、化学量論組成の水酸アパタイトが得にくいという欠点があった。さらにいずれの方法でも得られた水酸アパタイト粉体は凝集粒子を形成しやすいという性質もあった。そこで本研究では超音波噴霧熱分解法をもちいて凝集性のない超微粒子の水酸アパタイトの合成を試みた。 【方法】有効炉長1500mm(U型炉心管φ50mm×180mm)の電気炉を500〜1000℃に加熱し、それに2MHzの超音波発信器で霧化した原料溶液の液滴を100〜5000ml/minの乾燥空気とともに導入し、その熱分解反応によって水酸アパタイト粉体を合成した。原料溶液には、0.1mol・dm^<-3>硝酸カルシウム水溶液と0.11mol・dm^<-3>エチレンジアミン四酢酸ナトリウム水溶液とを混合してキレート錯体を形成させ、それに0.06mol・dm^<-3>リン酸アンモニウム水溶液を加えて濃アンモニア水で所定pHに調整したものをもちいた。 【結果】本研究を遂行するにあたり、超音波噴霧熱分解装置を設計し、完成した装置で実験を行った。まず、原料溶液のpHを11に調整し、熱分解反応の温度を変えると、800℃以下では未燃焼のカーボンが残ったが、1000℃で行う白色の水酸アパタイト粉体が得られた。未燃焼のカーボン量は原料溶液の液滴を炉内に導入する際の乾燥空気量にも依存し、乾燥空気量を少なくするほどカーボン量は少なくなった。しかし、生成した水酸アパタイト粉体の量も少なくなるため、乾燥空気量の最適化が必要であった。また、原料溶液のpHを変えると、えられた水酸アパタイトの組成に影響し、それを低くするほどカルシウムイオンの欠損および炭酸イオンの含有が認められた。pH11、熱分解温度1000℃の条件で合成するとほぼ化学量論組成の水酸アパタイトをえることができた。この水酸アパタイトは、凝集性のない平均粒子径約500nmの球状粒子であり、かさ高い粉体性状をもつ粉体であった。
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