研究概要 |
1.1,12-ジオキサ[12](1,4)ナフタレノファン-14-カルボン酸(1)のイソプロピルエステルへの2-置換-1-ナフチルGrignard試薬の芳香族求核置換(S_NAr)反応により、1,1′-ビナフチル-2-カルボン酸エステル類を収率良く得ることができた。この際、基質であるナフタレノファンの面不斉が>99〜91%eeの効率で軸不斉に変換されることを見い出した。本反応は、シクロファンの面不斉を他の不斉要素に変換した初めての例である。また、誘導される軸の絶対配置をCDスペクトルから帰属し、先に提案した1-(-)ーメントキシ-2-ナフトエ酸エステルに対するS_NAr反応の不斉誘導機構を支持する重要な知見を得た。 2.(RS)-1の(-)ーメンチルエステルを(-)ーメントキシドのS_NAr反応により、速度分割することを試みた。その結果、選択性は最高でも31%deと低かったが、メントキシドの中心性不斉によりナフタレノファンの面不斉を識別できることがわかった。 3.光学的に純粋な2-メチル-1,3-ベンゾジオキソ-ル-4-カルボン酸エステルへの2,6-二置換フェニルリチウムのS_NAr反応により、6-ヒドロキシビフェニル-2-カルボン酸エステルを合成できた。この際、60%ee程度不斉収率が得られたが、生成するビフェニル類は精製段階でラセミ化しやすく、実際にはさらに高い効率で、アセタール上の中心性不斉がビフェニルの軸不斉に変換されているものと考えられる。 4.(3-ブロモブトキシ)-2-(-)ーメントキシ安息香酸エステルを合成し、これを金属マグネシウムと処理することにより分子内S_NAr反応を検討したが、期待した生成物は得られなかった。従って現在のところ、炭素中心性不斉から炭素中心性不斉への変換は成功するに至っていない。
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