研究概要 |
研究代表者はアリルスタナンを用いるアセチレンやオレフィン類のラジカル的アリルスタニル化反応について詳細に検討し,以下のような成果を得た. アセチレンとしてエチルプロピオラートを用いて,アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)存在下,各種のアリルスタナンとの反応を行ったところ,β位に電子求引基を有するアリルスタナンが収率よくアリルスタニル化体を与えることがわかった.反応は高い位置および立体選択性で進行し,スタニル基が末端炭素に入ったアンチ付加体が主生成物となった.次にアセチレンを変えて本反応の適用範囲を調べたところ,電子不足な末端あるいは内部アセチレンだけでなく,1-ドデシンのような単純アルキンでも効率よくアリルスタニル化できることがわかった.本反応により得られるビニルスタナンのスタニル基は様々な官能基や水素に変換することで,多置換オレフィンの立体選択的合成に利用することができた. オレフィンのアリルスタニル化についても同様な傾向が見られ,β位に電子求引基を有するアリルスタナンがよい結果を与えた.電子不足な末端および内部オレフィンに対して効率よくアリルスタニル化が進行するが,電子豊富なオレフィンには全く反応しなかった.また,不斉助剤を有するアクリル酸エステルやアミドを用いると,50〜70%のジアステレオマ-過剰率で不斉誘導が起こった.さらに,アクリル酸メチルのアリルスタニル化によって得られたβ-スタニルエステルはホモエノラート等価体として働き,アルデヒドとの付加体を与えることもわかった. 本反応を1,6-エンイン類に応用したところ,5員環への環化とアリルスタニル化を同時に行うことができた. 以上のように本研究では,今まで報告例のないラジカル的なカルボメタル化反応について検討し,その合成反応としての有用性を明らかにすることができた.
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