リンアザイリドとカルボニル化合物の反応によるaza-Wittig反応についてはこれまで多くの報告例があるが、活性アルケンへの共役付加反応についてはほとんど研究がなされていない。リンアザイリドの新規な合成化学的利用を開拓することを目的とし、ジフェニルエチルイミノホスホランとエノンの反応について研究を行った。 イミノホスホランの窒素原子上の置換基の効果を調べるため、トリメチルシリル、エトキシカルボニル、ベンジルの各基を窒素上に付与したイミノホスホランを調製し反応を行った。その結果、N-ベンジルイミノホスホランと4-ヘキセン-3-オンの反応において共役付加反応が実現し、β-アミノケトンが38%の収率で得られた。又、同様の反応を種々のエノンを用いて行ったところ10〜43%の収率で対応するアミノケトンが生成した。更に、リン原子上のエチル基をメチル基に変え先のヘキセノンと同様な反応を行ったところ、収率が著しく向上し対応するアミノケトンが80%で得られた。上記の結果よりリン及窒素原子上の置換基を工夫することにより、リンアザイリドのエノンに対する共役付加反応を実現できることが明らかとなった。 これまで環状リンイリドとエノンの反応は、連続的なMichael-Wittig反応が進行し環状化合物を立体選択的に生成することを明らかとしてきた。本研究においても同様なMichael-aza Wittigを目的とし、先のN-ベンジルイミノホスホランとエノンの反応を種々の条件下検討した。しかしながら上記の反応経路で生成したと考えられる化合物は検出されず、β-アミノケトンのみが得られた。以上、連続的なMichael-aza Wittig反応の実現には至らなかったが、アザイリドのエノンへの共役付加反応に成功した。
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