研究概要 |
本研究では、酸性修飾基としてカルボキシル基を有する新規鎖状光学活性モノホスフィン配位子の開発とそれらのパラジウム錯体触媒を用いた不斉アリリックアルキル化反応への利用について行なった。鎖状光学活性モノホスフィンカルボン酸配位子の合成は次のように行なった。クロトン酸tert-ブチル、4-メチル-2-ペンテン酸tert-ブチル等のα,β-不飽和カルボン酸エステルにTHF溶媒中、n-ブチルリチウム及びHMPA存在下、ジフェニルホスフィンを1,4-付加させ、対応する3-(ジフェニルホスフィノ)ブタン酸tert-ブチル、3-(ジフェニルホスフィノ)-4-メチルペンタン酸tert-ブチルをそれぞれ93%、69%の収率で得た。続いてエステルの酸分解を行ないラセミ体として3-(ジフェニルホスフィノ)ブタン酸(DPBA)、3-(ジフェニルホスフィノ)-4-メチルペンタン酸をそれぞれ71%、42%の収率で得た。得られたラセミ体は光学活性なフェニルエチルアミンを用いた優先晶出法により容易に光学分割できた。この光学活性モノホスフィンカルボン酸配位子と酢酸パラジウムより系中でパラジウム錯体を調製し、酢酸シクロペンテニル、酢酸シクロヘキセニル、酢酸シクロヘプテニル、酢酸シクロオクテニル等の環状酢酸アリルとジエチルホスホノ酢酸エチルとの不斉アルキル化反応を行なった。その結果、従来の配位子と比較して非常に高い不斉収率でアルキル化反応が進行することを見い出した。さらに、環状アリル化合物の環サイズが増大するに従い、不斉収率も向上することが判明した。基質として酢酸シクロオクテニル、配位子にDPBAを用いた時に99%ee以上という最高の不斉収率を得た。
|