研究概要 |
本研究では、光照射で誘導される配位子の立体構造変化により基質の金属への配位を動的に制御して反応を促進あるいは抑制するような分子機能(酵素様反応)の光制御を可能にすることを目的として、光応答性分子を架橋部位にもつ複核金属ポルフィリン錯体触媒の設計・合成を行なった。設計する合成複核ポルフィリン錯体の架橋部位分子としてアントラセン誘導体の光二量化可能な分子を用いることにより金属間距離・配向の制御が可能となる。すなわち、暗所中、アントラセン単量体のときはポルフィリン錯体による活性酸素O_2^-の発生により2つの中心金属サイトで酸素酸化(オキシゲナーゼ様)反応が進み、一方、光照射下では、アントラセン二量体が形成され、O_2^-分子のみ中心金属間に入り込むことができるものの基質分子は入り込めないために活性酸素消去能(スーパーオキシドジムスターゼ様活性)のみを示す。複核ポルフィリン錯体は、Becker等の方法(1979年、スウェーデン)でアントロンを原料として得た1,2-ビス(10-ヒドロキシ-9-アンスリル)エタンと塩化チオニルで酸ハロゲン化した5-(4'-クロロカルボキシフェニル),10,15,20-テトラフェニルポルフィンをベンゼン中でカップリングさせることにより合成した。粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-アセトニトリル)で精製し、^1H-NMR測定により同定した。現在、複核ポルフィリンの光照射(高圧水銀ランプ、窒素下、5℃)前後での光二量化(分子内4π+4π環化付加反応)から熱的解離(復元)する際の半減期を、光二量化したシクロブタン部位の^1H-NMR強度測定から調べている。今後、ポルフィリンの中心金属に鉄(II)、コバルト(II)あるいはマンガン(II)等を挿入してこれらの錯体のサイクリックボルタンメトリー測定等からO_2^-消去が可能な錯体を探し、既存の酸素酸化反応との組合せによる高効率光応答性酸素酸化触媒反応系の構築を試みる予定である。
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