研究概要 |
重合開始剤を効率よくサイクルできる重合反応を開発するため,重合活性点としてカルボン酸エステルを持つ不溶性の高分子ゲルを合成し,これをビニルエーテルの重合の開始剤に用いて不均一系でカチオン重合が起こる反応条件を見い出した。さらに対応する可溶性の高分子開始剤と低分子開始剤を用いた重合を行い,重合活性点が不溶性のゲル中に存在することの影響を明らかにした。 1.アクリル酸エステル単位を含む高分子ゲルの合成:アクリル酸エステルとエチレングリコールジメタクリレートをラジカル共重合し,アクリル酸エステル単位を含む高分子ゲルを合成した。 2.アクリル酸エステル単位を含む高分子ゲルを開始剤とするイソブチルビニルエーテルのカイチオ重合:合成した高分子ゲルを開始剤に用いてイソブチルビニルエーテルを少量の四臭化スズの存在下,トルエン中,0℃で重合すると不均一系でのカチオン重合が起こり寿命の長い生長種が生成することを見い出した。しかし生成ポリマーの分子量分布は広く,理想的なリビング重合ではなかった。さらにポリマーの約30%が開始剤ゲルに結合したまま回収されることがわかった。 3.対応する可溶性の高分子開始剤と低分子開始剤を用いた重合:不溶性のゲル開始剤を用いた重合と比較して,同じ反応条件下での可溶性の低分子開始剤による重合ではリビング重合が起こり分子量分布の狭いポリマーが生成した。可溶性の高分子開始剤による重合は不溶性のゲル開始剤を用いた重合と同様,分子量分布の広い寿命の長いポリマーが生成した。
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