研究概要 |
近年、有機合成化学の分野において、種々の希土類錯体を用いた有機反応開発が盛んに行わなれ、多くの成果が報告されてきている。特にランタノイド(III)アルコキシド類は、Kagan、柴崎らを中心に数多くの研究が成されてきており、不斉合成触媒へ応用されるなど、非常に興味深い反応剤の一つであるといえる。本研究では、有機合成の分野で一般的に用いられているKaganらの方法により調整したランタン(III)およびセリウム(III)トリイソプロポキシドを用い、極性ビニルモノマーに対する重合活性、選択性について検討を行った。その結果、この反応剤は、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリルアミド等に対して重合活性を示し、例えば、MMAの重合では、重合は速やかに進行すること、得られたポリマーは80%前後のmm含量を有し、比較的広い分子量分布を示すことなどの特徴が認められた。また、代表的な金属アルコキシドであるリチウムイソプロポキシドとは全く異なる重合活性を有していることがわかった。さらに、重合活性種、重合機構等を明かにするため、開始剤として用いたランタノイド(III)トリイソプロポキシドの詳細な分析を行った。ICP,UV等による分析の結果、ランタノイド(III)アルコキシドを中心とするクラスターが重合活性種となっていることが示唆された。さらに、本重合反応系についてGC,GC-MSおよびNMR等による分析を行ったところ、極めて微量ながら、アセトンが検出されたことから、本重合の開始反応がMeerwein-Ponndorf-Verley還元機構で進行していると考えられる。
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