研究概要 |
1 クロトン酸t-ブチルの重合を、(C_6H_5)_2Mgを開始剤に用いてトルエン中低温で行うと、立体規則性の高いポリマーが収率よく得られた。3項に述べる構造解析の結果、このポリマーは「ジヘテロタクチック体」と命名すべき新規なジタクチックポリマーであることが明らかになった。一方、このモノマーの重合を9-fluorenyllithiumとR_3Alとの錯体を開始剤に用いて行うと、-78℃ではエリトロジイソタクチック体が、-50℃ではジシンジオタクチック体がそれぞれ生成した。また、後者の条件でイソクロトン酸t-ブチルの重合を行ったところ、イソクロトン酸エステル類としては初めて、高収率でポリマーの得られることがわかった。 2 クロトン酸トリフェニルメチルの重合を、9-fluorenyllithiumと(S,S)-(+)-2,3-dimethoxy-1,4-bis(dimethyl-amino)butane等の不斉なジアミンとの錯体を開始剤に用いて行うと、一方向巻きらせん構造に基づく光学活性ポリマーが得られた。このポリマーの比旋光度は、溶液中で不可逆的に減少した。この現象は、らせんの反転によるラセミ化と考えられる。反転のエネルギー障壁は、約20kcal/molと測定された。 3 上記のポリマーを高分子反応によってポリクロトン酸メチルに誘導した。立体規則性の高いポリクロトン酸メチルは、通常の有機溶媒に溶解しないが、hexafluoro-2-propanolには溶解することを見出した。これを溶媒に用いて^1Hならびに^<13>CNMRスペクトルを測定することにより、ジタクチシチ-解析の方法を確立した。これらのNMRスペクトルの帰属は、1および2項の重合系から単離した3〜8量体の単結晶X線解析に基づくものである。いずれのポリクロトン酸メチルも、ポリメタクリル酸メチルに比べて熱分解温度が30℃以上高かった。
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