研究概要 |
高活性重合触媒の開発を目的として以下に記す新規希土類金属錯体の合成に成功し、その構造と重合触媒作用について検討を行うことができた。 1.Ph_2Si架橋型錯体 従来用いてきたMe_2Si基に代わり、Ph_2Si基により2つのシクロペンタジエニル(Cp)環を架橋したものを配位子として希土類錯体の合成を行った。その結果SmのIII価錯体においてはCp環上に導入した2つのMe_3Si基がそれぞれ2,4および3,4位に位置するC_1対称型の構造を有する錯体が得られた。そしてこの錯体は高いエチレン重合能を示した。またSmのII価錯体においてはPh基の立体的な効果がより顕著に現れた結果、2つのCp環上で置換基がいずれも3,4位に位置するC_<2v>対称型の構造を有する錯体が生成した。このII価錯体は期待されたように3,4位の置換基の効果により非常に高分子量のポリエチレンを与えた。 2.2本のMe_2SiOSiMe_2架橋を持つ錯体 2本のMe_2SiOSiMe_2基により2つのCp環を架橋した構造を有するSmのII価錯体の合成に成功した。この錯体のCp(center)-Sm-Cp(center)のバイトアングルはMe_2Si架橋のものより大きくて非架橋のbis-Cp^*錯体とほぼ同じであった。この錯体のエチレン重合能が非常に低いものであったことから、重合能の発現にはバイトアングルが小さいこと、すなわち錯体前面の反応場が広いことが重要であることが明らかとなった。 3.新規C_1対称型錯体 Me_2Si基で架橋したCp環に計3つの置換基を導入することにより新規C_1対称型錯体の合成に成功した。これらのSm,YのIII価錯体はエチレンやMMAの重合に高い活性を示したが、特に期待されたMMA重合における立体選択性の向上には大きな効果はみられなかった。
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