二次元NMRによる研究の予備実験として、一相系ポリマーブレンドであるポリメタクリル酸メチル(PMMA)/ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系の誘電緩和を調べたところ、その異分子間相互作用による局所的なネマッチク秩序領域(LNO)の形成により界面を形成することと、異種ポリマー同士の配位に極めて長い時間を要することを発見した。 PMMA単体は側鎖運動による誘電損失ε″ピークをHavriliak-Negami式でカーブフィットし、ピーク周波数f_<max>を得た。f_<max>はPVDFをPMMAに10%混合すると高周波数側へ移動する。これは、PMMAに低Tg成分であるPVDFを混合することでTgが低下、つまり主鎖の運動性が上がり、それと協同的にすく鎖の運動性も上がったと考えられる。しかしPVDFが20%以上ではPVDFの増加に伴いf_<max>は低周波数側へ移動する。これは上述の主鎖と側鎖の協同的な運動という考え方では説明することができず、異分子間相互作用による側鎖運動の束縛によると考えられる。本混合系を等温下で熱処理すると、f_<max>は熱処理時間tとともに30時間の時間スケールで低下する。これは側鎖運動の束縛がtとともに強くなることを意味し、異分子間相互作用による束縛のためのPMMA側鎖へのPVDF鎖の配位が極めて長い時間スケールで進行すると考えられる。また、80Hz付近に界面分極によるピークが現れ、緩和強度がtとともに増大することを見出した。これは異分子間相互作用によるPMMA側鎖のPVDF鎖への配位によってLNOが形成されたためと考えられる。
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