研究概要 |
近い将来の日本の宇宙機の地球再突入ミッションのカプセル熱設計に関連して、輻射熱伝達の実験的研究を行った。極超音速風洞施設(2段式軽ガス銃)を用いて、飛行マッハ数15のポリエチレン弾の周りに生じる輻射光の強度履歴の測定を行った。高速発光現象の計測には、本経費で購入した光パワーメーター(YOKOGAWA Model-3292)を使用した。この計測装置は、立ち上がり時間が5ナノ秒と非常に短いので、時間分解能の高い発光履歴を得ることができた。 発光履歴は、飛行体前方に生じる弓型衝撃波層から強い発光があることを示しており、その最大値は、自由流空気圧の増加に対して指数関数的に上昇することがわかった。今後解析結果と比較を行う予定である。 また、最初のピークの後方に、数センチから数十センチメートルに渡って、強度およそ十分の一の発光領域(テイル)が観測された。その長さは、空気圧にほぼ比例して変化した。この発光領域は、比較的低温度であるため、普通の高温気体からの輻射ではなく、炭素分子が関係した化学反応に伴う発光ではないかと考えられる。このテイルの存在は世界で初めての報告となり、今後飛行体のアブレーションによって生じる炭素と高温空気の化学反応の研究の、先駆けとなるものと期待される。 実際の再突入カプセルの背面には、このテイル領域からの輻射熱伝達が、加熱の大部分を占めるものと予想され、今後の熱防御板の開発において,更なる輻射とアブレーション生成物の反応の研究が必要であることが示された。
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