| 研究概要 |
本研究の目的は,球形凝縮相からの定常な弱い蒸発流およびそれへの弱い凝縮流の振舞いを気体論に基づき解明することであった.幸い,本年度においてその目的は全て達成することができ,この問題に対してモデル方程式はもちろんのことBoltzmann方程式に基く精密な解を得ることに初めて成功した.その結果,不連続をもつ速度分布関数,それにより得られる各巨視的物理量の空間的振舞い,さらに従来から最も関心が寄せられている球からの蒸発率,エネルギー流出率の希薄度に対する依存性が全範囲の希薄度に対して明らかになった.
また,当初の計画にはなかったが,申請者にとっての新たな試みとしてこの問題を非平衡熱力学の立場からも検討し,気体論による解析の結果が希薄度の全範囲でOnsagerの相反関係(定理)を裏付けている事を示した.(Onsagerの相反関係は希薄度の低い場合に対しては示されているが,それ以外の場合では今のところ明らかではない.どのような条件の下でこの関係が保証されるのかについては更に検討を要する.)
最後に,本解析結果を利用すると,蒸発・凝縮のない球からの熱伝達問題の解が得られることも明らかにし,全範囲の希薄度に対して実際にその解を求めた.
なお,以上の成果をまとめた論文は,裏面に記載の雑誌へ掲載されることが既に決まっている.
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