本研究は、鉄イオンを含んだ鉱廃水の酸化還元電位を鉄酸化細菌により調節し、この液を浮選用水として用いて石炭中に含まれる黄鉄鉱を分離するプロセスを開発することを目的としている。本年度は、鉄(II)イオンと鉄(III)イオンをそれぞれ所定の濃度で含む模擬浮選液中での黄鉄鉱(柵原鉱山産)の濡れ性について、種々の方法(バブルピックアップ法、ハリモンドチューブ法、マイクロフローテーションセル法)で検討し、以下のような知見を得た。 1.鉄イオン無添加の場合、黄鉄鉱はpH6以上の中・アルカリ性領域では親水性で気泡とあまり付着しないが、pH6以下の酸性領域では疎水性となり気泡とよく付着した。 2.鉄イオンの添加濃度が高くなるに従い、黄鉄鉱が気泡と付着し始めるpHはより酸性側へと移行した。また、溶液の酸化還元電位が高くなるに従い、すなわち、全溶存鉄イオンにしめる鉄(III)イオンの比率が高い場合ほど、黄鉄鉱が気泡と付着し始めるpHは低下した。このpHは、水酸化鉄(III)の沈殿が生成し始めるpHとよく一致し、黄鉄鉱は水酸化鉄(III)の付着により親水化されるものと考えられる。 3.水酸化鉄(III)が存在しない強酸性領域では、溶液の酸化還元電位が高くなるにつれ黄鉄鉱の疎水性は増した。これは、鉄(III)イオンにより黄鉄鉱が酸化され、元素硫黄が表面に生成してくるためと考えられる。
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