東アフリカの乾燥地帯では、シコクビエは焼畑でだけ栽培される作物である。本研究では、焼畑という特殊な土壌条件を考慮し、シコクビエの窒素とリン酸(1)及びケイ酸(2)の要求性についての実験をおこなった。また低土壌水分下での養分吸収について、主な吸収域の特性を目的とした根系観察試験をおこなった(3)。試験は1995年に宇都宮大学の実験圃場でおこなった。(1)川砂を充填した1/2000アールのポットにシコクビエを栽埴し、ホ-グランド培養液を灌水した。処理区は培養液の窒素及びリン酸の濃度をそれぞれ標準液の1/2、3/4、5/4とした。(2)蒸留水を溶媒とした上記標準培養液を、ケイ酸濃度が0、10、20、40、80ppmとなるように調整して、水耕栽培した。(3)板状ロックファイバーを培地として作製した観察用根箱にシコクビエを直橋し、低水分条件下での根系の発達を観察した。結果:(1)シコクビエはリン酸濃度に対する反応が鈍く、生育・収量はその濃度による影響を全く受けなかった。窒素濃度については、低濃度区で低位節からの分げつ発生が抑えられたが、種子収量に差はなかった。また光合成速度にも差は認められなかった。(2)ケイ酸濃度は、生育・収量及び茎の挫折強度などに全く影響を及ぼさなかった。(3)シコクビエの冠根は生長軸に対して比較的鋭角に貫入し、いずれの冠根も発根後1週間ほどで50cm以下の深層域に達した。土壌水分の減少に対し、冠根の発生と伸長は著しく抑えられた。しかし、土壌深層における単位冠根長当たりの一次分枝根数は増加し、それらの伸長も促進された。以上の結果から、シコクビエはリン酸、ケイ酸の要求量が低いが、窒素については低濃度区で小茎数に伴う穂数の減少を高位節から発生した遅れ穂が補償したため減収は認められなかったが、収穫期は遅れた。また、低土壌水分下では深根化し、主要な養分吸収域は土壌深層に移行した。今後は、窒素とリン酸のさらに低い濃度に対する反応と、他の無機塩類の要求性、深層土壌からの養分吸収能力について検討したい。
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