本研究では、作物栽培におけるVA菌根菌の有効な利用法の確立を目指し、成育特性の異なる作物数種を用いて種々の作物のリン要求量と感染状況ならびに接種時における効果の有無を比較した。得られた結果は次の通りである。1.マメ科作物は、イネ科作物に比べ、リン要求量が高くより多くのリンを必要とすることが明らかにされた。2.マメ科作物はイネ科作物に比べ全根長が短く、根毛が少なく、長さも短いことが明らかにされた。リンは土壌中での移動性の小さい元素であることから、マメ科作物でリン要求量が高かったのは、根の形態がリン吸収に不利な構造になっているためと考えられた。3.VA菌根菌は、イネ科作物よりマメ科作物で感染しやすいことが明らかにされた。特に、インゲンマメとアズキでは他の作物に比べ極めて高い感染率を示した。4.VA菌根菌の感染は、作物の根から浸出される糖やアミノ酸によって促進させることから、種々の作物の根の全糖とアミノ酸含有量を調べたところ、イネ科作物に比べマメ科作物では糖やアミノ酸の含有量が高いことが明らかにされ、これらの物質の含有量とVA菌根菌感染率との間には正の相関関係が認められた。5.低リン土壌下で種々の作物にVA菌根菌を接種したところ、多くの作物で生育や収量が向上した。菌の接種による生育改善程度はイネ科作物よりマメ科作物のほうが著しかった。これは、マメ科作物の根がリンを吸収しにくい構造をしていることと、VA菌根菌が感染しやすいためと思われた。6.VA菌根菌の接種効果の最も著しかったインゲンマメに種々のVA菌根菌を接種したところGlomus sp.(y)を2400胞子接種すると低リン下においてもリン肥料を十分に与えた時とほぼ同様の子実収量を得ることができた。
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