研究概要 |
まず、トマトの葉から果実に至る維管束走向およびその連絡について顕微鏡下で観察を行った。その結果、ある節において観察される維管束走向は、その他の任意の節においても同様に認められ、一定の基本形の繰り返しからなることが知見として得られた。 次に、光合成産物の転流について検討を行った。主茎から発生した第1次側枝および第1花房の第2番花を摘除し、茎頂に1果のみを着生させた。着果直後の幼果のついた植物体を用い、主茎の最上位葉〜5節下位の葉に0.37〜0.74MBqの^<14>CO_2を施与し,光合成を行わせた。^<14>CO_2施与後一定時間ごとに、転流経路にあたる茎,果柄,果皮,隔壁,胎座を維管束単位で切り分けた。切り分けた各維管束部分について80%アルコールで抽出を行い,得られたアルコール可溶性固形物に含まれる^<14>C-活性を液体シンチレーションカウンターを用いて測定を行った。以上の実験は、肥大がほぼ終了した果実や,成熟が進んだ果実のついた植物体についても,同様に行った。この結果,^<14>C-活性は特定の維管束を中心とする部分で高く,光合成産物の転流は維管束走向に従って行われることが知見として得られた。 今後は、上記のアルコール可溶性固形物を高速液体クロマトグラフィーを用いて各糖区分に分けた後に、各区分の^<14>C-活性を測定することによって、光合成産物の転流経路に従った糖代謝を明らかにする。また、寒天培地上に植え付けた幼果〜成熟果に^<14>C-スクロース,^<14>C-グルコース,^<14>C-フルクトースを吸収させた場合の果実内での糖代謝と比較する。
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