研究概要 |
黄色花シクラメンと他品種との交雑においては、雑種第1代では黄色花は発現せず,雑種第2代において初めて黄色花株が観察され、その割合は全体の4分の1であった.このことから,シクラメンの黄色花形質は劣性の単一遺伝子に支配されていると考えられた.また,黄色花はすべてカルコンにより発現していた。 また,シクラメン野生種の花色素,特にアントシアニジンの調査を行った結果,多くの野生種で,シアニジン,デルフィニジン,ペオニジンおよびマルビジンの計4種のアントシアニジンが認められた.この中でも,特にマルビジンが,他のアントシアニジンに比べて,多く含まれていた.ところで,本実験で検出されたデルフィニジンは,青色花の育種には非常に重要なアントシアニジンであり,これを有する種の育種への利用は,世界でまだみられていない青色花シクラメンの作出に大きく寄与する可能性がある.しかしながら,シクラメンには通常無色のロイコアントシアニジンの一種であるロイコデルフィニジンが存在し,これらは色素抽出過程での加水分解により,デルフィニジンに変化する.本実験でも,同様の現象が起きた可能性は強い.したがって,各野生種のロイコアントシアニンおよびアントシアニンの分析も必要となろう. シクラメンの花色および花色素については,研究があまり進んでおらず,中でも黄色花形質および近縁野生種の花色素については,あまり研究例がない.本実験の結果,シクラメンの黄色花形質の遺伝と近縁野生種の花色素についていくつかの知見が得られた.今後,さらに詳しい分析を行うことにより,シクラメンの花色育種の方向性が明らかになろう.
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