イチゴの病害感染防御機構の化学的解明をめざし、イチゴ(麗紅)根の成分精査を行い、感染防御物質(ファイトアレキシン)と推定される数種のポリフェノール類を単離、構造決定した。その中で、新規フラボノイド化合物である(+)-taxifolin3-O-α-L-arabinofranosideは根部において特に高含量であり、重要な感染防御物質であると期待される。また、イチゴの各種培養系(毛状根、カルスおよび茎葉培養体)を確立し、培養条件(培地成分、各種ストレス等)により、ポリフェノール成分の生産パターンが変化することも確認した。特に、疑似感染ストレス(菌抽出物添加)を与えた場合、新しく生産性が向上する化合物を数種検出した。それらの化合物は、新しい抗菌物質の可能性が高く、今度精製および構造解明をする予定である。 現在、イチゴ根より単離したポリフェノール類をマーカーとして用い、高速液体クロマト(HPLC)分析におけるポリフェノール類の含量パターンと耐病性(抗菌性)の相関を解析し、HPLC分析システムの、新しい耐病性イチゴ系統選抜技術への活用について検討中である。また、組織培養技術を利用することにより、新規抗菌性物質の検索と単離を試みている。将来は、ポリフェノール生合成に関連した酵素、遺伝子の同定を行い、それら関連遺伝子の調製と導入による新しいタイプの病害抵抗性イチゴ(ポリフェノール生産パターンが最適に抗菌性を示す様に代謝制御された系統)の作製を考えている。
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