研究概要 |
1.カイコの発育経過と精子形成過程との関係の調査 カイコの発育過程を追いながら精巣内の生殖細胞の形成状況を調査したところ,化性の異なる系統間に差があることや,2化性品種では催青温度条件の違いによって差のみられることが明らかとなった。一方,無核精子の形成が始まる時期は,いずれの系統,または異なる催青温度条件下でもほぼ一致しており,二型精子の形成がすべてのカイコで共通の調節を受けていることが示唆された。また,その時期からは,二型精子形成の調節に幼弱ホルモンが関与していることが推測された。 2.内分泌系による精子形成の調節についての検証 内分泌系によって精子形成が調節されている可能性を検証するために,精巣・生殖細胞の移植,幼虫の結紮,内分泌器官の摘出・移植,ホルモンの投与などが精子形成に及ぼす影響を調査したところ,3・4齢幼虫からのアラタ体の摘出が無核精子の形成開始時期を早めることが確認された。 3.他の鱗翅目昆虫の精子形成との比較 クワコ・ヤママユガ・サクサン・エリサンなどの絹糸昆虫においても,同様の調査を行ったところ,精子形成と発育経過との関係にはカイコの場合と異なる特徴が見られた。また,一部の種では,内分泌系因子の消長にカイコには見られない雌雄差のあることが示唆され,精子形成の調節との関連においても,新たな問題が提起される結果となった。
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