研究概要 |
1.蛍光標識試薬を用いた酸性糖のポリアクリルアミド電気泳動の分析条件の検討 アルギン酸およびポリガラクツロン酸から調製した酸性オリゴ糖を用いて、蛍光標識試薬の種類、及びそれらで標識した各オリゴ糖のポリアクリルアミドゲル上での泳動条件について検討を行った。その結果、低重合度(DP5以下)のオリゴ糖では8-Aminonaphthalene-1,3,6-trisulfonic acidを標識剤として用い、40%アクリルアミドゲル上で泳動するのが最も分離能がよく、また、高重合度のものは同試薬で30-40%アクリルアミドグラジエントゲル上で泳動するのが最適と考えられた。しかし、いずれの場合でも糖の重合度の差は分離に大きく反映したが、構成糖の差はあまり影響しなかった。一方、標識試薬に7-Aminonaphthalene-1,5-disulfonic acidを用いた場合、泳動に時間がかかりバンドもやや不鮮明になるものの、オリゴ糖の構成糖の差違をゲル上での分離に反映することができた。 2.泳動後のゲル中からメンブラン上への標識オリゴ糖のブロッテイング条件の検討 泳動後のゲル中から陽イオン性ナイロンメンブラン上への蛍光標識オリゴ糖のブロッテイング条件の検討を行った。その結果、泳動槽を用いる湿式ブロッテイング法あるいは加圧式ブロッテイング法で行うと効率よくブロッテイングできることが明らかとなった。また、このような装置がない場合でも、時間をかければ毛管法(Southern法)でブロッテイング可能であった。しかし、毛管法の場合、他の方法に比べてバンドが多少拡散し、サンプルが少量の時は不鮮明にになった。 3.メンブラン上の標識糖の酵素標識レクチン及び酵素標識抗体を用いた特異的検出 メンブラン上にブロッテイングされた蛍光標識糖の特異的検出法について検討を行った。酵素標識レクチン及び酵素標識抗体どちらを用いた場合でも、検出の操作中にメンブラン上の標識糖が脱離していくため、糖タンパク質や糖脂質の糖鎖研究に要求される様な高感度での検出は困難であった。しかし、検出自体は可能であったため、ブロッテイングした標識糖のナイロンメンブラン上への固定法の改良が今後の課題として残された。
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