研究概要 |
Bacillus thuringiensis subsp.israelensis(BTl)は双翅目昆虫に殺虫力のある結晶性菌体内顆粒(クリスタル)を生産する。BTlクリスタルは,複数の殺虫性タンパク質で構成されており,これらは同菌の有する70Mdプラスミド,pBTl-6,に集中的にコードされている.本研究では,(1)pBTl-6の構造と遺伝子構成,(2)BTlクリスタルの形成に関わる殺虫性タンパク質安定化因子の活性発現について検討した. 1.高分子プラスミドpBTl-6の遺伝子構成 このプラスミド上に存在する殺虫性タンパク質遺伝子として,既にcryIVA〜cryIVD,cytAの5種類が知られていたが,今回新たにcryIVCと相同性の高い新規遺伝子Xを発見した.X遺伝子の部分塩基配列と大腸菌のlacプロモーターを用いた高発現系の結果からX遺伝子産物は約56kDaタンパク質と推定した.また,サザンブロット解析と制限解析からpBTl-6の約1/5に相当する20kbのBamHI制限断片上にcryIVA,cryIVBとXの3つの遺伝子がクラスターを形成していると結論した. 2.殺虫性タンパク質の安定化機構 pBTl-6上には種々の殺虫性タンパク質の他に殺虫性タンパク質安定化因子である20kDaタンパク質もコードされている.この20kDaタンパク質の活性発現機構を解析するために,BTl130kDa殺虫性タンパク質遺伝子(cryIVAまたはその変異体)と20kDaタンパク質遺伝子とを,枯草菌およびBTlの両細胞に共形質転換して,これらの細胞内での殺虫性タンパク質の生産量や安定性を調査した.枯草菌では,20kDaタンパク質存在下においても細胞内にクリスタルを観察することができなかった.一方,BTlでは,20kDaタンパク質の有無によってクリスタル形成率が変動すること,また変動の程度がcryいVAに導入された変異の種類によって異なることが判明した.
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