Bacilluscereusの発芽時に特異的な胞子コルティクス分解酵素(SCLE)の部分アミノ酸配列を決定して、それらに基づき4組のPCR用プライマーを合成した。このうち一組のプライマーによってBacillus cereus染色体DNA(鋳型)から692bpのPCR産物が得られ、増幅されたDNAは先に決定されたSCLEのアミノ酸配列をコードしていた。得られたPCR産物をプルーブとして全構造遺伝子のクローニングを行い塩基配列を解析したところ、本酵素は前躯体を持たず休眠胞子中に成熟タンパク質として存在することが示唆された。これは、先にクローニングされたClostridium属のSCLEが発芽時にプロテアーゼによる限定分解を受けるのと異なり、発芽時のSCLE活性化機構が種により違うことが考えられた。また、SCLEはその酵素活性がSH修飾剤により阻害されることからシステイン残基が活性に重要であると予測されていた。そこで、wild type SCLE、および遺伝子構造から推定されたアミノ酸配列中SCLEに唯一存在した258残基目のシステインをグリシンに置換した組み替えタンパク質を大腸菌に発現させ、その酵素活性を比較検討したところ、変異体も低いながら活性を保持しておりシステイン残基は酵素活性には必須ではないものと推察された。さらに、本酵素の遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列をもとに、類似する酵素が他の胞子形成細菌にも存在するかどうかについても検討した結果、枯草菌にSCLE相同遺伝子が存在する可能性が示唆され、現在当該遺伝子のクローニングを試みている。
|