エリスロポエチン(EPO)は、赤血球系前駆細胞の赤血球への分化・増殖に必須の糖タンパク質であり、胎児では肝臓、成体では肝臓で生産される。申請者は神経細胞に対してもEPOは作用することを示し、中枢神経系ではアストロサイトがEPOを生産し、ニューロンにEPO受容体を介して作用することを明らかにした。これによりEPOは脳・肝臓・腎臓において組織特異的発現をしていることが判明した。本研究はEPOの脳・肝臓・腎臓特異的に発現するために必須の領域を決定し、そこに結合する転写因子を同定することによりEPOの組織特異的発現調節機構を解明することを目的として研究を行った。 EPO遺伝子の組織特異的発現に必要な転写調節領域の決定するために、様々な領域のヒトEPO構造遺伝子の上流および下流領域をルシフェラーゼ遺伝子の両端に接続した。これをEPOを生産する初代培養アストロサイト細胞、肝ガン細胞Hep3Bに導入し、トランジエントのルシフェラーゼ活性を指標として、脳・肝臓におけるEPO産生に必要な領域の決定を試みた。その結果、肝臓での発現にはEPOの上流0.2Kbおよび下流の酸素応答配列が存在すればよいことがわかった。いっぽう脳での発現は、上流3.5Kbと下流の酸素応答配列をルシフェラーゼに接続したものでは、酸素応答配列だけを接続したものに比べて転写の活性化が見られた。しかし上流8.5Kbを接続すると転写は抑制された。従ってこの領域は脳での特異的発現に関する部分ではないと推察された。この知見から脳での特異的発現には、されに上流あるいは下流の配列が必要であることが明らかとなった。 脳でのEPO受容体の発現部位を明らかにするために、18日目のラットの免疫組織化学的染色を行い、海馬および大脳皮質に陽性のニューロンが存在することを明らかにした。
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