インターフェロンをはじめとした新規サイトカイン遺伝子を単離するためには、その母集団として様々なT細胞株を取得する必要があると考え、ヒト抹消血に電気穿孔法によりガン遺伝子を導入し、ヒトT細胞株の樹立を行った。その結果、健常人、ガン患者及びアレルギー患者由来のリンパ球からそれぞれ317株、692株及び154株のT細胞株の取得に成功した。これらT細胞株はCD4あるいはCD8などの膜表面抗原を発現しており、また既知のサイトカインであるインターロイキン2、インターロイキン6、インターフェロンγ及び顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインを分泌しており、機能的なT細胞であると推測された。次にこれらT細胞株の抗原認識能を混合リンパ球試験により検証した。その結果、これらT細胞株は同種異系細胞であるRaji細胞やDaudi細胞及び異種細胞であるP815細胞に対して反応性を有し、抗原認識能が保持されていることが確認された。また意外なことに主要組織適合性抗原遺伝子複合体(MHC)を持たないK562細胞に対して最も強い反応を示し、MHC抗原に依存しないT細胞の活性化が起きているものと考えられた。実際にこれらT細胞株はK562細胞に対して強い細胞障害活性を有していたことから、MHC非依存的に細胞障害活性を有するナチュラルキラー細胞様の活性を有したT細胞が多く含まれているものと考えられた。さらにこれらT細胞株は肺ガン細胞株であるA549細胞に対しても細胞障害活性を有してしたことから、腫瘍細胞を特異的に攻撃しうるエフェクター細胞として利用しうる可能性が示唆された。
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