酵母、高等動物の三量体G蛋白質αサブユニットは、受容体や情報増幅因子と相互作用することが明らかになっている。しかし高等植物においては、三量体G蛋白質を介した情報伝達系が存在することが示唆されているにすぎず、その実態は未だ不明のままである。そこで、イネのαサブユニットと相互作用する分子を検索することを通して、植物細胞で未だ同定されていない、三量体G蛋白質と共役した受容体や情報増幅因子を単離・同定することを試みた。 本年度は、イネの三量体G蛋白質αサブユニットと相互作用する因子を酵母のtwo-hybrid systemを用いてスクリーニングした。1×10^7個のスクリーニングの結果、アラビドプシスのcDNAライブラリーから2個の陽性クローンを得た。これら2個のクローンの塩基配列の決定を行い、遺伝子バンクに対するホモロジー検索を行った結果、どちらのクローンもchorismate mutase/prephenate dehydrataseと全長に渡って約30%の相同性を示した。しかしchorismate mutase/prephenate dehydrataseと三量体G蛋白質αサブユニットが生体内において相互作用しているとは考えにくい。むしろ得られたクローン中にイネの三量体G蛋白質αサブユニットと偶然強い相互作用を示すアミノ酸残基が存在した結果であろうと考えられる。ただ現時点では酵母、高等動物で三量体G蛋白質αサブユニットと相互作用することがわかっている既知の蛋白質と共通するアミノ酸配列は見つかっていない。今後は得られたクローンの欠失変異株を作成し、αサブユニットと相互作用する領域の決定を行う予定である。
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