ブラシノライドのイソヒビターを探索する目的で同時に投与したブラシノライドの活性を相殺する活性物質を検索した結果2種のフラボノイドを見いだした。これを研究の発端とし、イネラミナジョイントテストを指標として種々のフラボノイド中にブラシノライドのアゴニスト、アンタゴニスト、ブラシノライド共力活性(BR共力活性)物質を検索した。 モリンが極めて弱いながらもブラシノライド様活性を示すことが観察された。本研究でフラボノイドを活性物質の探索源とする発端となった2種の活性物質がいずれもメトキシ置換基を多く有するフラボンであったことから、5つあるモリンの水酸基を全てメチル化した化合物も合成しその活性をラミナジョイントテストを用いて検討したところ、本メチル化モリンは、単独ではラミナジョイントの屈曲に何の活性も示さず、ブラシノライドと同時に投与したときにブラシノライドにより誘起される屈曲を強めるBR共力活性を有意に示した。そこで他の数種のフラボノイドについても水酸基をメチル化してそれらの活性を検討したところ、メチル化フィセチンがメチル化モリンと同等の、メチル化ケルセチンが微弱ながらもBR共力活性を持つことがわかった。また、モリン誘導体について5つの水酸基の一部をメチル化した化合物を合成しそれらのBR共力活性を検討したところ、部分的にメチル化したモリンでも水酸基全てをメチル化したモリンと同等程度のBR共力活性を持つものがあることがわかった。特に、モノメチル化物でも少なくても2つの化合物がBR共力活性を有することがわかった。 また、フラボンがブラシノライドで誘起されるラミナジョイントの屈曲を相殺するブラシノライドアンタゴニスト様活性を示すことを見いだしたが、フラボンと他の植物ホルモンとの相関を調査した結果、フラボンはジベレリン誘起のイネ幼苗徒長、IAA誘起のマカラスムギ子葉鞘伸長のいずれについても阻害作用を示し、フラボンはブラシノライド作用の特異的阻害物質とは言えないものであった。
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