研究概要 |
活性酸素によるタンパク質中のトリプトファン残基の酸化修飾について、以下の2つの観点から検討した。 1.活性酸素による直接的なトリプトファン(Trp)残基の酸化 我々は、活性酸素生成系であるキサンチン/キサンチンオキシダーゼ/鉄(III)-EDTAにおけるTrp残基の酸化修飾物として、oxindole型とformylkynurenine型の生成物をペプチドレベルにおいて確認している。そこでこれらの生成物をタンパク質レベルにおいて確認するための一つの方法として、酸化修飾タンパク質(リゾチーム)の酸加水分解物から検出・定量する方法を検討した。まず、酸加水分解条件(6N HCl,105℃,24h)下におけるoxindole-3-alanineとformylkynurenineの安定性を調べたところ、いずれも(formylkynurenineはkynurenineとして)極めて安定であった。そこで酸化リゾチームの酸加水分解物をHPLCで分析し標品との比較を行ったところ、oxindole-3-alanineが確認された。しかしながら、kynurenineは検出されなかった。さらに、トリプシン酵素分解によるペプチドマッピングによりリゾチームにおけるTrp残基の酸化部位を調べたところ、目立った位置選択性は認められなかった。また、鉄の存在状態にも着目し、遊離鉄[Fe(III)-EDTA]をヘム鉄(チトクロムc)にかえて同様の系での酸化をペプチドレベルで行ったところ、oxindole型の酸化生成物のみが選択的に生成されることが明かとなった。 2.過酸化脂質の二次分解物によるTrp残基の修飾 マロンアルデヒドと4-ヒドロキシノネナ-ルについて検討したが、Trp残基の修飾はほとんど確認されなかった。今後はTrp以外のアミノ酸残基について検討してみる予定である。
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