研究概要 |
1.ヒト大腸癌由来培養細胞株Caco-2のタイトジャンクション(TJ)の透過性を増す因子をシシトウ抽出物から各種カラムクロマトグラフィーにより精製しSP-1〜5を得た。^1H-,^<13>C-NMR及びFAB-MSによりそれらの構造を解析した結果、SP-1,3,4,5はそれぞれcapsianoside C,E,B,Fであり、SP-2はcapsianoside CとDの混合物であった。 2.capsianosideのTJへの影響を、透過性膜上に培養したCaco-2の経上皮電気抵抗の低下により調べた。その結果より疎水的であると予想されるcapsianoside BやFは、capsianoside Eに比べると強い活性を示した。最も親水的であると考えられるcapsianoside Cには有意な活性は見られなかった。 3.capsianoside F処理により、低分子量の透過性マーカーであるフルオレッセンやルシファーイェロ-の透過性は上昇した。一方で、平均分子量3000の蛍光標識デキストランの透過性に大きな変化は認められなかった。 4.capsianoside F処理によりリポソーム内に取り込ませたグルコースの漏出が見られたが、Fura-2による細胞内カルシウム濃度測定では処理による有意な変化は認められなかった。また、リン酸化経路の各種阻害剤処理による活性への影響はなかったが、TPAによりプロテインキナーゼC(PKC)を活性化することにより抑制された。 5.微小管の阻害剤はcapsianosideの活性に影響を与えなかったが、サイトカラシンDによる処理はその活性を抑制した。また、蛍光染色によりアクチンフィラメントの形態変化を確認した。また、F-アクチン量の増大とG-アクチン量の減少を観察した。 6.以上の結果から、capsianosideはPKC活性を抑制することやアクチンフィラメントの構造を制御することによりHJにおける透過性を増大しているものと考えられた。capsianoside処理による蛋白質リン酸化の程度の変化の検討及びTJ蛋白質に対する抗体の作成は本年度内に完了することは出来なかった。
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