ビタミンB12(B12)の生理機能の発現に極めて重要であるB12補酵素の合成機構については現在もなお不明な点が多く残されている。高等動物のB12の補酵素の合成機構を解明するために、B12補酵素合成系の最終段階を食媒するB12sアデノシル化酵素に着目した。まず本酵素の正確な活性測定法を確立し、その後詳細な酵素化学的性質を検討した。本酵素の基質であるB12sは水溶液中では非常に不安定で、容易に酸化されB12aとなる。また、B12s/B12aの酸化還元電位は非常に低いために、穏和な条件下で人工的にこの基室を調製することは極めて困難である。そこで、本酵素の生成物であるアデノシルB12からB12sへの逆反応を利用して、生成されたB12sが酸化型2、4-ジニトロフェノールインドフェノール(DCIP)を還元する時の600nmの光吸度変化をダブルビーム分光光度計で検出することで本酵素活性を測定する新規な測定法を開発した。本法はDCIPが比較的高い分子吸光係数(22000)を有するによりpmol/min/mg proteinオーダーまで測定できた。本活性測定法を用いて原生動物のEuglena gracilis Zとラット肝臓の無細胞抽出液を用いてB12sアデノシル化酵素の諸性質を調べた。いずれの生物の酵素も基質のアドノシルB12、Mg^<2+>(Euglena)あるいはMn^<2+>(ratliver)、トリポリリン酸が活性発現に必須であった。また、至適pHは8.5付近であり、至適温度は40℃であった。Rat liverの酵素は細胞内ではミトコンドリアにのみ局在していたが、本酵素活性はイオン交換カラムクロマトグラフィーにおいて3種のピークに分離されたが、ゲル濾過によりいずれも分子量28000に単一のピークとして溶出された。これらの結果は本酵素にアイソザイム、あるいは多様な分子種の存在が示唆された。また、これと同様な結果がEuglenaにおいても観察された。本研究により初めて高等動物のミトコンドリアに多様なB12sアデノシル化酵素が存在することが明らかになった。
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