1.本課題研究においては、まず1995年10月に新潟大学佐渡演習林においてスギ人工林を対象として、樹冠内の枝の枯死過程の測定を行った。本調査においては、同一林分内において優勢林、準優勢木、介在木それぞれ3本及び被圧木1本について、樹冠内部のすべての枝についての年輪解析から、枝の枯死過程及びその樹冠級間における差異を検討した。その結果、枝の枯死過程は樹冠級間において異なる傾向性を示すことがわかった。また、この傾向性は、過去の研究において示唆されている樹冠級間における葉量分布の傾向の差異を説明しうる知見であり、今後さらに資料の採取を行うことにより本研究の結果を基に、一般性を持ったモデルを提案できる可能性が示唆された。 2.1.の知見により、樹冠構造における樹冠級間の差異が示されたが、これらの差異が樹幹形においてもどのような差異をもたらすのか、またそれが林齢及び樹種において異なる傾向性を示すのかを明らかにするため、本研究代表者が先の論文で提案した樹幹形モデルを基に新たな幹形の指標を提案し、スギ及びヒノキの同齢林分から採取された樹幹解析データによりその有効性を示した。この指標は、林木の樹幹形及び材籍の適切な指標であるとともに、同一林分内においては樹冠級と同様に林木の競争状態を示す林木直径と密接な関係を示した。しかし、林齢の増加に伴うにおける指標の林分内における変動は、樹種間で異なる変化パターンを示した。
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