研究概要 |
豪雨の際の崩壊発生分布を見ると,同じ降雨にみまわれても,中古生層地域では崩壊発生が少なく,花崗岩地域では崩壊発生が多いことはよく知られている。しかしながら,なぜこのような違いが生ずるかについてはまだよくわかっていないる。また,一般に崩壊の発生条件を解析する際に,浸透水による土層の強度低下を要因とすることが多い。しかしながら,豪雨時の水の挙動については観測例が少ないために,浸透水の挙動はブラックボックス的なモデルで済まされることが多かった。今年度は,両岩石の分布する伊那谷周辺の山地において中古生層・花崗岩の小流域を2つずつ設け,調査を行つた。また,その小流域において,降雨浸透水の挙動を自記テンシオメータを用いて詳細に自記観測した。 中古生層流域では、降雨に対する流出応答は遅く、流出量は少ない。一方,花崗岩流域では、降雨に対する流出応答は速く、流出量は多く、地質が異なると流出特性が異なることが確認された。また,地中水の挙動は、中古生層流域では降雨に対し鉛直下方向に動きを示し、花崗岩流域では斜面下方向に動きを示した。このことは、中古生層流域でTDR土壌水分計により基盤近傍の土壌水分量の変化を測定すした結果、地中水の基岩への浸透が確認された。以上のことから、この両流域では、降雨に対する地中水の挙動に明確な違いがあることが認められた。また,一面せん断試験の結果,中古生層の土壌と,花崗岩の土壌では,あまり強度に違いが見られなかった。したがって,崩壊の発生の違いは,基盤岩への地中水の浸透能力の違いによるものと思われる。
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