リグニンは二次代謝産物の中では最も多いものの一つであり、その生合成制御系の機構解明は他の芳香族系二次代謝産物の解明に多くの情報を与えると期待される。更に、リグニンの様に大量に蓄積される物質の生合成にかかわる遺伝子の制御系の解明により、植物に大量に目的の化学物質を生産させることが可能になると考えられる。現在、リグニンの生合成に関与している酵素は多数知られているが、それらが植物内のどの組織で、いつ発現しているかを明らかにした研究は少ない。そこでそれらの酵素に対する抗体を用いて、免疫組織化学的研究を行った。 1.リグニン生合成に関与する酵素CA4HとCADとPALとOMTと酸性ペルオキシダーゼの遺伝子断片を大腸菌で発現させ、蛋白質を合成させて精製し兎に免疫して抗体を作成した。 2.これらの抗体を一次抗体としてキタカミハクヨウの各組織を用いて免疫組織化学的反応を行い、どの組織でいつこれらの酵素が発現しているのかを光学顕微鏡レベルで調べた。 3.CA4HとPALとOMTと酸性ペルオキシダーゼの酵素の遺伝子のプロモーターとGUS遺伝子を融合したカセットをタバコに導入、形質転換し、組織化学的に検定した。 その結果、これらの酵素は組織特異的に維管束で主に発現しているが、傷害などの刺激によって組織非特異的に発現することが解った。
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