研究概要 |
従来、ヒノキチオールはメバロン酸経路またはマロン酸経路を経て生合成されると考えられていたが、申請者らの当該年度以前の実験により、マロン酸はヒノキチノール生合成に関与せず、メバロン酸を経由することが示された。ヒノキチノール生合成前駆体として次に考えられるものはゲラニオールであることから、^<14>Cラベルゲラニオールの化学合成を目指した。コールドかつ通常スケールにおける合成法はほぼ確立したが、ラジオアイソトープを用いるため、またその十分な放射活性濃度を得るために行ったミクロスケールでの合成は十分な収率が得られていない。そこで、現在ホットにおける合成法を再検討している。 ^<14>Cゲラニオールの合成に困難があったため、^<13>Cによってラベルされた基質を投与し、^<13>C-NMRを用いてヒノキチオールに取り込まれた^<13>Cを検出する方法を検討した。細胞内への取り込み率の点からは^<13>Cグルコースを細胞培養系に投与することが適当と考え、できるだけヒノキチオール中の^<13>Cの存在比率が高くなるよう(効率よく^<13>Cグルコースが取り込まれるよう)、培養条件の検討をまず行った。その結果、糖アルコール(例えばマンニトール)を共存させることにより、0.1%グルコース濃度で通常(グルコース2%)と同様のヒノキチオール生成が見られたので、これを^<13>Cグルコース投与実験系とした。この実験系から得られたヒノキチノールを単離精製し^<13>C-NMR分析を行ったところ、ヒノキチオールの2,3,5,7,9,10位を示すシグナルが増大した。これらのラベル位置は、Erdtmanが推定したカレンを経由するヒノキチオールの生合成経路を経た場合のラベル位置と一致するが、その存在比(NMRのシグナル強度比)は推定経路からは説明できない。今後、別の生合成経路の存在等を考慮する必要がある。
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