1.設置型水中カメラによる行動観察とDNA分析による血縁判定から、アイナメ類とカジカ類の繁殖生態を調査した。 2.アイナメとスジアイナメ、いずれもスニ-キングが観察された。しかし、アイナメでは、スニーカーは若齢の非なわばり雄であったのに対して、スジアイナメでは、隣接するなわばり雄であった。スジアイナメの繁殖地では、高密度で繁殖なわばりが形成されることが関係していると判断された。また、DNA解析から、いずれのスニーカーも、子どもを残していることが確かめられた。 3.アイナメでは、保護雄が自分の産んだ卵に対する捕食が観察された。捕食は卵の基質への接着がゆるみ脱落した際に生じた。捕食された卵はスニ-クされた卵塊であることが多かったが、スニ-クの際に雄同士の争いで接着が不十分になるように思われ、なわばり雄が血縁の信頼性の薄い卵塊を選別して捕食しているとは、結論できなかった。 4.以上の調査結果から、繁殖に適した場所が不足すると、なわばりが高密度で形成され、スニ-キングが頻繁に起きるようになる。そのため、ふ化前に基質から脱落する卵塊が増え、個体群が減少する仕組みの存在が示唆された。したがって、沿岸域に多い基質性産卵魚の増殖にあたっては、種苗放流だけでなく、繁殖場の整備がきわめて重要であろう。 5.イソバテングとケムシカジカの卵を、カイメンなどの無脊椎動物から見いだしていたが、今回の観察から雌が単独でそれらの生物に産卵することが分かり、これらのカジカ類は産卵前に交尾をすることが明らかとなった。
|